茶室「松樹庵」修繕工事

市民会館の庭園に建つ茶室「松樹庵」(しょうじゅあん)は、明治初期に醤油醸造家・茂木佐平治によって建てられました。昭和期に入り解体され、昭和43年には市内の個人宅に移築されていましたが、昭和58年に野田市に寄付されて現在の場所に移築され、翌59年11月1日、市民のための茶室として貸出が始められました。

木造平屋建、こけら葺きの屋根を持ち、腰掛待合や蹲を備えた本格的な茶室です。内部は本勝手で台目床を構え、貴人口と躙口を備えています。

平成9年には野田市市民会館(旧茂木佐平治家住宅)とともに、国の登録有形文化財となっています。

修繕前の松樹庵

令和2年11月から令和3年3月にかけて、屋根の葺き替えを中心とした修繕工事が行われました。屋根は薄い板を何枚も重ねていく「こけら葺き」という工法でできています。

こけら葺きは「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」の一つとして、令和2年12月17日に、ユネスコの世界無形文化遺産に登録されました。

世界無形文化遺産は、「伝統的舞踊,音楽,演劇,工芸技術,祭礼等の無形文化遺産を消失の危機から保護し,次世代へ伝えていくための国際的な協力及び援助の体制を確立すること」を目的に、2003年のユネスコ総会において採択されており、これまでに、能楽、人形浄瑠璃文楽のほか、和食:日本人の伝統的な食文化、和紙:日本の手漉き和紙技術、などが登録されています。

「伝統建築工匠の技」にはほかにも、畳製作、建具製作、左官(日本壁)など日本の伝統的建築に関わる様々な技術が含まれています。

今回の修繕で使用した板は修繕前と同じサワラを用いていますが、修繕工事を行った株式会社児島工務店の職人によれば、こうしたこけら葺きの屋根は、何度も葺き替えていく中で違う材質の板を使うこともあるとのことで、建設当初に何の板が使われていたのかはわかっていません。

板を隙間なく並べていく

板に竹釘を打ち込んで固定していく

水がしみない様に、板の隙間は互い違いになるように並べる

美しい曲線はまさに職人技

現在、茶室「松樹庵」は工事用のテントで覆われていますが、覆いが取れましたら当ブログで修繕を終えた姿をご紹介いたします。

また、修繕に使われた実際の道具を、市民会館内で展示中です。ぜひご覧ください。

茶室「松樹庵」修繕工事紹介展示(~令和3年4月15日(木)5月5日(水祝)まで) ※会期延長いたしました。【令和3年3月29日更新】